2026/6/13

莫妄想

禅に面白い言葉がある。

「莫妄想(まくもうぞう)」。意味はシンプル。「妄想することなかれ」。

でも実践は決して簡単ではない。

不安になると、まだ起きていない未来へと思考を巡らせる。

反対に、失敗や後悔を思い出すと、意識は過去へと引き戻される。

未来を心配し、過去を振り返ることは、人間らしい営みともいえる。それらを完全になくそうとすることは難しい。

むしろ、「考えないようにしよう」とするほど、かえってその考えにとらわれてしまうことのほうが多い。

禅では、こうした心の動きを執着として捉えることがある。

一方で、心理学の立場から考えると、必ずしも執着そのものを消し去ることが目標ではない。

たとえば、不安や後悔をなくそうとするのではなく、それらとの適切な距離を保ちながら付き合うこと。

心の中にある矛盾や葛藤を抱えながらも、現実の生活のなかで一歩を踏み出していくこと。

そうした関わり方が重視される。

空想や妄想を完全になくすことは難しい。少なくとも私には難しい(笑)。

だからこそ、「妄想するな」という教えを、「妄想に飲み込まれるな」とすると少し楽に感じるかもしれない。

過去や未来に心が向くことはあってもよい。

その世界だけに閉じこもらず、今ここでできる具体的な行動へと意識を戻していく。

禅の「莫妄想」は、思考をなくすための言葉ではなく、思考に支配されないための言葉なのかもしれませんね。